97-04-10
早い話が急性蓄膿症ってやつでございます。
なぜわたくしがこのような恐ろしい病に犯されるに至ったかは、聞くも涙話すも
涙の物語がございます。
思い起こせば、あれは夏のある日のことでした。
西伊豆に堂ヶ島という、とても景色のよい海のきれいなところがございます。
私は例年友人たちとこの地に海水浴にゆくことを常としておりました。
その日も私は海にもぐって、魚を探したり、さざえをとったりしておりました。
友人の一人から「ハイパーベンチレーション」、つまり潜水前に早い呼吸をして
体内を過酸素状態にし、4分程度の長時間の潜水を可能にする方法（グレートブルーで
エンゾ様もしておられました）を習った私はちょっと得意になっていたのです。
いつもはあまり行わないような荒業を、ふと、やってみたくなったのでありました。
それは、海上に浮かんでいるフロートから後ろ1回転半ひねりを行いつつ入水するという
Ｃ難度のわざでした。そのわざに果敢に挑戦した私は、水中で海水が鼻の内部に進入する
感触を感じつつ、そのまま潜水に突入したのでございました。
なぜあのような暴挙に至ったのか、今から考えるとどうしても思い出すことができません。
その後楽しい時間を過ごしたのち、浜に上がった私は、ともすると大量に出そうになる
水っ洟をこらえつつ、浜にねそべっておりました。
しばらくすると水っ洟は出尽くして、とまりましたが、どうも喉の奥に鈍い痛みを
感じるようになりました。その時はまだ、それがどんなに恐ろしい事態を生むかを
知る由もなかったのです。
それはある日、突然襲ってまいりました。
海から帰って3日ほどの時間が経過したある朝、私は自分の顔面右半分が猛烈な
痛みを感じていることに気がつきました。それはちょうど奥歯が痛むのに似ておりますが
むしろ、表面的な痛みではなく頭の中が内側から圧迫されるような、
喩えるならば、みなさん、かき氷などを大量にいただいたときに、おでこの中が
きゅーん
と痛むのを感じたことがございますか？
はい。ちょうどそのような感じが永久に続いている状態でございました。
（結果的に私はその状態に3日間ほどおかれることとなりました）
これは尋常でないと本能的に悟った私は、すぐに近所の総合病院の耳鼻科に
直行したのでございました。
病院は患者さんで満員で、私は待合室で待っておりました。
その間も痛みは絶え間なく襲ってくるため、私は壁に頭をがんがんぶつけながら
こらえておりました。それを見ておられた看護婦さんが、お医者様に、様子がおかしい
患者さんがいると伝えてくださったため、順番が繰り上げとなり、
頭部Ｘ線緊急撮影
鎮痛剤および抗生物質の投与
を受け、生命の危機を脱することができました。
私はこの病気を、現存するもっとも恐ろしい病気の１つであることを
法廷に立って証言することも辞せません
このように恐ろしい病気は地球上から根絶すべきであることを
強く主張する次第でございます。
以上で、わたくしの証言を終わります。